企画名

自然界が生み出すパターンを観測し、その形成過程を読み解く
 

参加教員

教員名 所属 職名
大谷真紀子 地球惑星科学専攻 (地物) 准教授
坂崎貴俊 地球惑星科学専攻 (地物) 准教授
宮崎真一 地球惑星科学専攻 (地物) 教授
市川正敏 物理学・宇宙物理学専攻 (物理1) 講師
小山時隆 生物科学専攻 (植物) 准教授
松本 剛 物理学・宇宙物理学専攻 (物理1) 助教
根田昌典 SACRA 特定教授
 

企画の概要

 現在地球上で見られる地形は、プレート運動に伴う地殻変動や火山活動、海や川の流れによる浸食・風化など、複数の作用を受けながら長い時間をかけ形成されたものである。地形は時に特徴的なパターンを示し、例えば海岸線や山の稜線がフラクタル形状を成すことはよく知られている。他にも、日本各地の海岸では海岸段丘と呼ばれる階段状の地形が観察されるが、これは地震等による地面の隆起と波による侵食によってできたものである。房総半島の海岸段丘では、明瞭な広い段丘と細かく狭い段丘の二つのモードが同じ地域に見られ、この地域で低頻度大地震と高頻度小地震が過去に繰り返されてきたことがわかる。また地形以外に目を向ければ、大気や海の流れは太陽や月の影響を受けて明瞭な日・季節変化を見せるし、我々生物の活動には体内リズムが存在するなど、パターンや規則性は自然現象に広く内在する。これらを観察し、その要因を探ることを本SGのメインテーマに据える。

 近年の観測技術の進歩に伴い、多様な自然現象の時空間的な動態を、手軽に、かつ、高分解能で測定することが可能となってきた。近年発達してきたドローンによる計測は、例えば先述の小段丘の観察に適したスケールの観測調査を手軽に行うことができる。本SGではドローンを用いた計測技術や3D再構築技術を養ってきており、昨年度は宮崎県の鬼の洗濯岩の観察、3Dモデルの作成等を行った。これまでの知見を本年度SGでも活用したい。

 本SGでは地球科学・物理学・生物学といった多様なバックグラウンドを持つ教員のもと、フィールド観測をベースに活動を行ってきた。引き続きこの体制で、広く自然界に潜む規則性を複眼的に読み解くことを目指す。具体的には、ドローンによる撮影・環境計測やデジタルカメラ定点観測などを用いて、地形、雲や波の変動、生物活動などに現れるパターンや規則性を観察し、それらを生み出す要因、形成過程について議論する。実際に観察する対象は、参加メンバーで話し合って決定する。これまで通り引き続き植物園及び演習林での観測を行うほか、観測データの利用手法の検討も並行して行っていきたい。

説明会資料

4/19(金)のスタディグループ説明会資料はこちら
 

実施期間・頻度

・実施期間:通年
・頻度:2〜3週間に1度の頻度でゼミや実習を実施。ゼミはドローンの練習や環境計測も挟みつつセミナー形式から始める。参加者の人数にも依存するが、教員の紹介が一巡したのち参加者のディスカッション/ディベート形式になる様に持って行きたい。

TA雇用の有無

有り

その他、特記事項など

・本計画は2023年度SG6の後継課題である。
・セミナー招聘(1~2回)やドローンによる観察のための研修旅行を企画したい(1〜3回、可能なら夏季)。

問い合わせ先

ohtani.makiko.5e*kyoto-u.ac.jp
(*を@に変えてください)
 

スタディグループへの登録は締め切りました。
関心のある方は macs *sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)までご連絡ください。

 


活動報告

活動目的・内容

本SGでは地球科学・物理学・生物学といった多様なバックグラウンドを持つ教員のもと、フィールド観測をベースにして、自然界に現れるパターンや規則性を複眼的に読み解くことを目的としている。2週間に1回程度の頻度で理学部植物園でのドローン飛行や測定の練習を行ったほか、数回のフィールドワークを実施し、測定結果の解析や議論を行なった。これまでのSG活動や今年度の練習で培ったドローンを用いた撮影技術や環境計測技術を活用し、地形や気象などの地球科学的な事象を主なターゲットとした観測と解析を実施した。

 

活動成果・自己評価

活動成果

(1)琵琶湖
昨年度本SGで新たに購入した水上ドローンを用いて、琵琶湖の水中撮影を行った。
(2)菅島臨海実験所(三重県鳥羽市)
夜光虫が外部からの刺激に反応して発光する様子を観察することを主な目的とし、名古屋大学理学研究科附属 菅島臨海実験所に赴いた。菅島臨海実験所は菅島南西部の小規模な湾内に位置する。対岸の鳥羽から船でアクセスするため関係者以外の往来がなく、湾での夜光虫観察に適している。我々が赴いた日は、午前中に大雨が降った影響により、残念ながら夜光虫をほとんど観測することができなかった。一方、日中に気温等の環境計測や地形撮影を行い、撮影したドローン画像から湾の三次元地形モデルを作成した。
(3) 島原・阿蘇
雲仙火山(長崎県島原市・雲仙市)・阿蘇火山(熊本県阿蘇市)において、火山地帯の特徴的な地形を対象としたドローン観測を実施した。雲仙火山は複数の火山体で構成され、現在も普賢岳を中心に活発に活動している。我々は普賢岳中腹の地形を空中から観測した。また雲仙火山の一つである眉山は1792年に大規模な山体崩壊を起こし、現在眉山の東側に点在する島々(九十九島)は、この山体崩壊で流出した土砂によって形成されたものであることが知られている。我々はドローンを用いて、島の分布を空中から観測した。
阿蘇火山は直径約20kmの巨大なカルデラを伴う活火山であり、中央火口丘とそれを囲む外輪山が特徴的である。中央火口の西部に位置する米塚は、火口から噴出した噴出物であるスコリアが降り積もって形成されたスコリア丘である。我々はドローンによる空中測量を実施し、米塚の三次元モデルを構築した(図1)。スコリア丘の斜面の傾斜角は安息角程度となることが知られているが、米塚の傾斜角は25〜30度程度と見積もられ、安息角(約30度)と同程度かやや小さい。米塚の形成は約3,300年前と推定されており、形成後の侵食作用を考慮した場合の傾斜角として妥当な値である。
また阿蘇外輪山は西側の切れ目部分に深い峡谷が形成されている。急峻な地形による局所的な気象環境を調べるために、ドローンを用いた観測を実施した。気温・水蒸気濃度・CO2濃度の高度プロファイルを得ることができ(図2)、渓谷の上部では大気がよく混合され、下部ではCO2濃度が高い等の地形を反映した特徴を捉えることができた。

自己評価

今年度実施したフィールドワークでは、天候により目的の観測を実施できなかったり、機器の故障やドローンの墜落などのトラブルが多数発生した。予期せぬトラブルが生じるのは野外観測の常ではあるが、このような観測の難しさを学生が身をもって実感することができたのは良かったのではと思っている。トラブルが発生しつつも、米塚の地形観測や阿蘇外輪山の気象観測では妥当な結果が得られ、ドローン観測の手軽さとその効果には改めて感心した。今後事例を増やしていくことで、理学的な発見に繋がるような発展性が見込まれる。今後の課題としては、普段の活動で学生がより自発的に参加できるような工夫ができると良いと感じた。

画像
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図1:ドローン撮影写真から生成した米塚の3次元モデル
 
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図2:阿蘇外輸山峡谷部で行った気象観測

 

SG6報告会スライド資料ダウンロード

SG6報告会ポスターダウンロード

参加メンバー

眞砂 海斗 地球惑星科学専攻 修士2回(M2)以上
仲俣 翔登 地球惑星科学専攻 修士2回(M2)以上
高岡涼 理学部 学部4回(B4)以上
林大寿 化学専攻 博士3回(D3)以上
野末 陽平 地球惑星科学専攻 博士2回(D2)
位田 稜弥 地球惑星科学専攻 学部3回(B3)